ベトナムで外国人はなぜ地元の人達より稼がなくてはいけないのか。

ここでは賃金格差とその背景となる理由について説明します。

ベトナムでは事実として、給料の話になることがあります。他の人が生活費にどれくらい使っているかは知りませんが、どれくらい稼いで、会社から休暇を与えられているかは知っています。

ときにはあなたが何をしているかよりもどんな人であるかが重要で、給料は同じ仕事をしていたとしてもどんな資質を持っているかで2倍も変わることがあります。

しかし、同じことがベトナム人と駐在員との給与体系の違いに当てはまるわけではありません。実際、特定の産業において高給となる仕事は外国籍に与えられるうえに、ベトナム人と同じような仕事をしてより高い給料を得ている外国人もいます。従業員にとっては疑問に思えることでしょう。

国際問題?

昨年、ESRCによる調査がガーディアン紙で発表されました。それによると発展途上国における人道支援や開発援助に関わる国際スタッフの給料はそれに関わる教育や研修なども含めると地元の人達と比べて合計では4倍以上もするということです。

同様に、ECA International(Employment Conditions Abroad)によって最近発行された年次調査によると、シンガポールにおける駐在費用は、アジア諸国でもっとも高く、通常の給料に加えて、税金や住居、インターナショナルスクール、施設、車なども含めると1年間でS$316,600 ($235,425)もかかるといいます。世界銀行の調べでは、シンガポールの平均年収は$51,880なので4.5倍近くかかるということになります。

しかし、ベトナムにおける実例に関しては、あまり知られていないように思えます。

おそらく現在まで、賃金格差は問題として取り扱われてこなかったからかもしれません。

今年の初めにオックスファムは、性別、民族、地域など、ベトナムにおけるあらゆる不平等を記載した調査を発表しました。しかし、そこにも駐在員と地元民の収入格差を示すデータはありませんでした。

2016年に発行されたHSBCの駐在員に関する調査が、ベトナムにおける給料に関して調べた数少ない資料のうちの一つですが、駐在員と地元民との給料格差に関して批判的に焦点が当てられているとはいえません。実際、HSBCは駐在員に優しい国として、東南アジアの中でシンガポールの次にベトナムを世界で19番目として挙げています。

HSBCの調べによると、ベトナムの駐在員は平均年収が$103,000 となり、昨年世界銀行の調べにより$2,200であったベトナム人の平均年収の50倍にもなります。今年1月に、ベトナムの労務相は、ベトナムの駐在員が2004年から6倍の12,600 人から 80,000人以上に増えていると発表しています。

これらのことを考慮すると、一般的に東南アジア、特にベトナムが、駐在員が出世していくための場所であり、地元民と外国人との格差は広がっていくように思えます。南国での6倍の給料って誰の経費なのでしょうか。

その差はどのように機能しているのか。

ベトナムにおける外国人とベトナム人の給料や雇用の格差は教区業界で最も顕著です。

ベトナムにおける急激な経済成長を顧みて、留学をするベトナム人も増えてきましたが、ホーチミンやサイゴンのような大都市では何千もの英語語学学校が若者の需要に対応するために、ここ10年の間に軒並み増えています。ハノイのNGOで働いている26歳のスコットランド人、ブリクサがベトナムで得た最初の2つの仕事は語学学校で働く英語教師でした。彼のインターンシップとしての給料は、ビザや住居、旅費などもすべて含めて月収600万ドン($264)でした。のちに月収1000万ドン($440)まで昇給しました。

そのときまでに彼は教師として正社員の職を得た際は、6か月目にして40分の授業で$28、月収にして3000万ドン($1,319)を得るようになりました。

ゴク・トランは、ブリクサと同じ語学学校で補助教師として2年間働いています。彼女の給料は1クラスで53,500ドン ($2.35) であり、外国人教師の12分の1です。ゴクの日々の仕事は、管理、出席確認、評価、外国教師や生徒の補助、急に授業を頼まれることもあります。彼女は月収で500万ドン ($219)ほど稼いではいますが、それでもブリクサのインターンをしていた頃よりも少ないです。

ブリクサは次のように言います。「外国教師はベトナム教師に面倒くさい仕事ばっかりさせます。教室の管理であったり、採点であったり。時には1週間で60クラスの採点をしなくてはいけません。一方で、外国人教師は授業中に仕事をするだけです。」

しかし、給料の違いは教育業界だけではありません。実際は、技術職から開発、経営層やコンサルタントにも及びます。

アン・トランは、情報サービスに属する外資系企業のSGHアジア社で人事マネージャーとして働いています。彼女によると外資系企業でも給料格差は一般的であると言います。

これに加えて、駐在員であれば雇用時に与えられる住宅費用、航空券、国内旅行、保険、インターナショナルスクールの学費などの福利厚生があります。

アンは「ときどき効率のことを考えると不平等に思えます。だってベトナム人でも外国人でも同じことでも駐在員であれば多くの給料をもらえます。」と言います。「私のように人事にいれば、誰でもわかっていることですが、私たちにできることは何もありません。」

扱いの違いは採用時から始まっています。ベトナムで人材が不足していなかったとしても外国人であればある程度の仕事をみつけることができます。

ハノイの転職フォーラムに行けば、英語が母国語となる外国人を対象に月収$1,000 から $2,000くらいでたくさんの広告をみつけることができます。アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなどが含まれます。

ゴクによれば、母国語話者であれば、通常は教授方法についての大学学位が必要だと思われるが、外国人教師はオンラインで得られるTEFL (外国語として英語教授) または TESOL (外国語話者に対する英語教授)の資格を得ればできます。

ブリクサの多くの友達は、ベトナムに住む外国人教師ですが、教育に関する資格や経験はありません。

原因は政治関係やそれ以上の事柄を含みます。

ベトナム人の経営者ですらベトナム人より外国籍の方に多くの給料を払っている理由がわかりません。ある産業では、需要と供給の関係に基づいているかもしれません。例えば、教育業界であれば、親が子に、アジア人の英語話者よりも白人に英語を習わせたい、という現実的な需要があるとブリクサは言います。

一方で、技術職であれば、アンは信用の問題だと言います。彼女の会社はドイツからの100%の資本であるので、ドイツ語話者がより信用される傾向があります。

「技術面において、海外とのやり取りを必要とする駐在員の職務があります。駐在員は一定のコミュニケーションルールの元で働くので、貴重だといえます。」とアンは付け加えました。「しかし、外国人であればより信用できるし、技術があると思われる節が特に営業職ではあります。世界で共通の人種問題であると言えます。」

高給取りが成り立つ一方で、他国に仕事のために移り住む際には「生贄」となる人もいます。そのような差別は、時に暗黙の了解にも思えます。

通常であれば、両者は同じ国に住んでいるというのに、外国人の専門職は出身国との比較の中で給料は支払われる一方で、ベトナム人はベトナムの給料体系の中で支払われます。争いはそこから生まれるのです。 

とはいえ、その違いに気づいているベトナム人は、その問題に対して忠告すると職を失う恐れがあるので、通常は何も言いません。

「ベトナム人の先生は給料の違いに気づいていることは間違えありませんが、私に対して直接不満を聞いたことがありません。」とブリクサは言います。

彼自身がベトナム人の主任と差別的な扱いについて抗議したことはありますが、誰もそうしようとする人はいません。「ベトナム人の先生に支援してくれる労働団体などはいません。」

「でもベトナム人より外国人の方が理解があるというのは非常に心地が悪いです。」とブリクサは加えました。

給料の違いは両者から検討しないといけません。主張、困惑、縮小、指摘などなどされたとしても、雇用主や社会からの批判的な反応がない限り、給料格差に関する溝は埋まりません。

ベトナムにおける給料格差の問題はあまり取り扱われていませんが、いまだに公共の場面でも私的な場面でも確かに存在します。なぜそんなに違った扱いが生じるのでしょうか。ある人は国籍だけで他の人よりも特権を持るのはどうしてでしょうか。

おそらく再度、話し合われるべきでしょう。